高濃度乳腺(デンスブレスト)とは?基礎知識と受診すべき乳がん検診を紹介
「高濃度乳腺って何?」 「デンスブレストって病気?」 高濃度乳腺(デンスブレスト)とは、乳腺組織の割合が大きい乳房のことですが、このように名前だけは知っていても、中身はよくわからないという方も多いはず。
乳がん検診の重要性が周知されつつある日本において、高濃度乳腺の基礎知識は知っておいて損はない教養です。日常生活にすぐに役立つよう、高濃度乳腺の方が受けるべき乳がん検診や高濃度乳腺の方に適した新技術など網羅的な情報を紹介します。 高濃度乳腺を熟知し、明日からの乳がん予防に役立ててください。

目次
- 1. 乳腺とは
- 2. 高濃度乳腺(デンスブレスト)とは
- 3. 高濃度乳腺の原因となる要素
- 4. なぜ高濃度乳腺に注目が集まるのか
- 5. 高濃度乳腺は自分ではわからない
- 6. 高濃度乳腺の場合、どうすれば良い?
- 7. 高濃度乳腺が受けるべき乳がん検診とは
- 8. 高濃度乳腺の乳がん検診 乳腺エコー検査
- 9. 高濃度乳腺の乳がん検診 無痛MRI乳がん検診
- 10. 高濃度乳腺に適した乳がん検査の新技術を紹介
- 10. まとめ
1. 乳腺とは
乳房は乳腺組織、脂肪組織、皮膚、乳頭・乳輪、血管などにより構成されています。乳房の内部には、小葉という母乳を分泌するための器官と、母乳の出口である乳頭、小葉と乳頭を繋ぐ乳管があります。小葉、乳管、乳頭をまとめて乳腺と言い、乳腺は乳頭から放射状に乳房全体に分布しています。 乳がんは小葉と乳管の上皮組織から発生し、増殖することで大きくなり、しこりとして見つかります。
2. 高濃度乳腺(デンスブレスト)とは
乳房は乳腺組織と脂肪組織との比率である「乳腺濃度」により、高濃度乳腺、不均一高濃度、乳腺散在、脂肪性という4つに分類されます。この中で高濃度、不均一高濃度に分類される乳房を「高濃度乳腺」といいます。
この分類はマンモグラフィ検査の画像を元に行う分類です。マンモグラフィの画像上で乳腺濃度25%未満は脂肪性、25%から50%は乳腺散在、50%から75%は不均一高濃度、75%以上は高濃度と分類されます。 マンモグラフィ検査は乳がん検診の第一選択に上がる検査です。高濃度乳腺(デンスブレスト)はそのマンモグラフィ検査において重要事項の一つであるため、一般的に周知されています。
2-1. 高濃度
乳房内に脂肪がほとんど混ざっていない状態で、デンスブレストに該当します。乳房の脂肪部分がおよそ10〜20%と言われ、閉経前の若年者に多くみられます(日本人女性全体の10%程度)。
2-2. 不均一高濃度
乳腺と脂肪が混在し、乳腺が不均一に散らばっている状態で、デンスブレストに該当します 乳房内の脂肪部分がおよそ40〜50%と言われ、40〜50代に多く見られます。
2-3. 散在性
おおむね脂肪で構成されている中に乳腺が散らばっている状態です。乳房内の脂肪部分がおよそ70〜90%と言われており、高齢者に比較的多くみられます。
2-4. 脂肪性
乳房がほぼ脂肪で構成されている状態です。乳房内に乳腺はほとんど存在せず、70代以上の高齢者に多く見られます(日本人女性全体の10%程度)。
3. 高濃度乳腺の原因となる要素
乳房内の乳腺濃度は個人差が大きく、さまざまな要素により変化します。乳腺濃度は一つの要素のみでなく、複数の要素が絡み合い、決定されます。乳腺組織の量が変化する要素を理解することで、自身が高濃度乳腺(デンスブレスト)に該当する可能性があるかがわかります。
3-1. 国籍
乳腺濃度は人種により変化するということがわかっています。 日本人を含めたアジア人は、欧米人と比べると、乳房が小さく脂肪が少ないため、乳腺濃度が高くなりやすいと言われています。日本の検診受診を対象にした乳腺濃度の集計データには、日本人の約4割が高濃度乳腺という結果のものもあります。
3-2. 年齢
乳腺濃度に大きな影響を及ぼす要素として、年齢が挙げられます。 一般的に乳房は加齢により乳腺組織が減少していき、脂肪組織が多くなります。これにより脂肪組織の割合が大きくなり、乳腺濃度は低下していきます。 高濃度乳腺(デンスブレスト)は若年者に多い傾向が見られ、閉経を迎える40~50歳以降は散在性や脂肪性に移行していきます。50歳未満は高濃度乳腺が80%に対し、50歳以上では10%と言われています。
3-3. 女性ホルモン
乳腺量には女性ホルモンが大きく関係しています。 女性ホルモンの分泌が多いと、乳腺が発達し、乳腺濃度は上昇します。女性ホルモンの分泌が増加する傾向にある生理前には、乳腺が発達した状態になると言われています。母乳を作り出すために女性ホルモンの分泌量が多い授乳期も乳腺濃度は上昇します。その他に、ホルモン補充療法を行っている方も高濃度乳腺になりやすい傾向にあります。
3-4. 授乳経験や出生数
岡山大学病院乳腺内分泌外科の元木崇之氏らが、第20回日本乳癌学会学術総会にて発表した『乳腺濃度における出産・授乳歴との関連性について』において、「授乳経験がある方は乳腺濃度が低下する傾向であり、出生数が多いほど乳腺濃度が低下する傾向がある」という研究データを発表されました。 子供の出産と授乳が乳腺濃度の低下に貢献するということです。まだまだ近年の研究ですので、今後の研究データも確認していく必要はありますが、留意しておくとよいでしょう。
【引用元】 日経メディカル:40代までの出産・授乳経験の有無が乳腺濃度に影響を与える【乳癌学会2012】 https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/gakkai/sp/jbcs2012/201207/525717.html
3-5. BMI
健康診断でも古くから利用されている指標である肥満指数(BMI)は体重(kg)を身長(m)の二乗で割って算出され、肥満・痩せの指標として広く使われています。 海老名メディカルサポートセンターの岡本隆英氏の論文発表である『乳腺濃度における出産・授乳歴との関連性について』において、「BMIが上昇すると、乳腺濃度が低下する傾向にある」ことが示されています。このデータ以外にも、欧米人の乳腺濃度が低い傾向はBMIと関連しているのではというデータもあり、BMIが乳腺濃度に影響を及ぼすことは明らかです。
【引用元】 乳腺濃度における出産・授乳歴との関連性について https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjabcs/23/3/23_366/_pdf

4. なぜ高濃度乳腺に注目が集まるのか
近年、高濃度乳腺(デンスブレスト)という言葉が一般的に知られ、注目されています。これは高濃度乳腺が体に与える影響が解明されつつあるため。高濃度乳腺は乳房の病気に対して、いくつかの悪影響があり、これらを知っておくことは予防医療(乳がん検診など)において重要です。
4-1. 高濃度乳腺は乳がん発生率が高くなる
高濃度乳腺(デンスブレスト)は乳がんのリスク因子となることが解明されてきています。 海外の研究では脂肪性乳房より高濃度乳腺において、乳がん発生リスクがやや高く(約1.2倍)なることが報告されています。ただ乳がんの発生率に関してさまざまな論文と比較すると、矛盾する部分があるため、高濃度乳腺が乳がんになりやすいという決定的なデータはないと言えます。 現状では乳がんになりやすいかもしれない程度の認識で良いかもしれません。
4-2. 高濃度乳腺はマンモグラフィ検査で乳がんを見つけづらい
乳がんは乳腺組織にできる病気のため、乳腺と重なった状態で発生します。 マンモグラフィ検査はレントゲン検査と同様の原理を用いた検査であり、画像上では乳腺は白く映り、脂肪は黒く映ります。これにより高濃度乳腺(デンスブレスト)では乳房全体が白く映り、脂肪性の乳腺では乳房全体が黒く映ります。 マンモグラフィ検査では乳がんは乳腺と同様に白く映るため、高濃度乳腺では乳がんとコントラストがつかなく、乳がんを見つけづらくなる可能性があります。 ただマンモグラフィ検査を高濃度乳腺の方が受診しても意味がないわけではありません。乳がんを見つける際に重要となる石灰化というのは、マンモグラフィ検査で見やすいとされています。石灰化の成分はカルシウムで、乳腺や乳がんよりはるかにX線の吸収が良いため、画像上はっきりと描出することができます。この描出された石灰化の形や分布を観察することによって、隠れた癌を見つけ出すことができます。一般的に円形より歪な形、点在しているより線状やある領域に集中した分布であることの方が癌の可能性が高いとされています。 高濃度乳腺であっても石灰化に関しては他の検査より、見やすいとされています。マンモグラフィ検査を受けないのではなく、他の検査と併用し苦手な部分を補完するように乳がん検診を受けましょう。
4-3. 高濃度乳腺は乳腺症になりやすい
乳腺症とは乳房にしこり・張り・痛みなどの症状が出るもので、女性乳房に起こるものとしては最も多いとされています。この他にも乳頭から分泌物が出ることもあります。両方の乳頭からの分泌、分泌物の色は乳黄白色が特徴です。 成熟期女性に最も多く、エストロゲン過剰状態が原因で、エストロゲンの蓄積がピークを迎える閉経期に向かって増加し、エストロゲンの分泌が低下し始める閉経後に減少していきます。よって乳腺症は40〜45歳にピークを迎えることになります。 乳腺症は女性ホルモンの影響を受けやすいため、生理前に症状が強くなり、生理開始すると症状が弱まることが多いです。痛みの出る場所や強さは、人によってさまざまなことが乳腺症の特徴です。 高濃度乳腺(デンスブレスト)の方は乳腺量が多いため、乳腺症の症状が出やすい傾向にあります。もし乳房に強い痛み、しこり、張りが出た場合には病院の受診を検討してください。
5. 高濃度乳腺は自分ではわからない
自身が高濃度乳腺(デンスブレスト)に該当するか気になる方は多いと思いますが、乳腺濃度はマンモグラフィ検査を行い、得られた検査画像を元に分類します。そのため、乳房の見た目により乳腺濃度を判断することはできません。 まれに「乳房が大きい=乳腺が多い」と思われる方がいますが、それは誤った認識です。あくまでも乳腺濃度、つまり乳腺の割合であり、体積は関係ありません。「高濃度乳腺=乳房が大きい」ではないのです。 乳がん検診の指針において、高濃度乳腺の方に通知する義務は今のところありません。ただ、「高濃度乳腺の場合は通知する」という検診施設も増加してきています。自治体の検診では、受診者に乳房の構成に関する情報を通知するかどうかは、自治体の判断に委ねられています。2017年に実施した調査では、受診者へ通知をしている自治体は全体の13.5%ほどしかなく、通知をしない自治体が大半を占めていました。通知内容も様々で、高濃度乳房であることを知らせるだけのものもあれば、他の検査を推奨するものもあったそうです。 一度高濃度乳腺と通知された場合でも乳腺濃度は日々変化します。年齢による変化はもちろんのこと、その他にも、ダイエットをすることで乳房の脂肪が取れ、乳房内の乳腺の割合が増えれば高濃度乳腺に分類されるようになります。そのため、高濃度乳腺に該当する可能性があることに一喜一憂しないようにしてください。
【引用元】 厚生労働省 乳がん検診における「高濃度乳房」への対応について https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000166903.pdf
6. 高濃度乳腺の場合、どうすれば良い?
高濃度乳腺(デンスブレスト)であるかもしれない、もしくは乳がん検診で高濃度乳腺通知を受けた場合、不安になる方がいますが、心配はいりません。あくまで高濃度乳腺はマンモグラフィ検査における乳腺濃度による分類ですので、病気ではありません。 前述した通り、乳腺濃度は日々変化しますし、乳腺濃度は自身の努力で調整できるものではありません。過度に心配をし、ストレスを感じる必要はありません。 何より重要なことは高濃度乳腺でもその他の乳腺構造でも、しこりや痛みなど異常を感じたら、すぐに受診することです。 乳がんはしこりや分泌物など、場合によっては自身で気づくことができるがんでもあります。実際に自己触診による乳がんの発見率は少なくありません。日々の生活の中での観察を習慣づけることで、少しの違和感にすぐ対応することができます。 日頃から自身の乳房を意識して生活するには、厚生労働省が推進している「ブレスト・アウェアネス」を心がけることが良いでしょう。 ブレスト・アウェアネスという新しい習慣 ブレスト(乳房)・アウェアネス(意識)とは、「自らの乳房の健康状態を気にかけ、乳房の変化に敏感になること」を指します。 乳がんは、初期段階ではほとんど人体への自覚症状が現れません。そのため、乳房の小さな変化に自身で気づかなくてはなりません。ブレスト・アウェアネスを習慣化することは、乳がんの早期発見に繋がります。実践するための重要項目は4つになります。
6-1. 自分の乳房の状態を知る
入浴時や着替える際に、自分の乳房を見て、触れて、状態を確認する習慣を持ちましょう。 普段の状態を知っておくことで、異変にいち早く気づくことができます。
6-2. 乳房の変化に気を付ける
乳がんの早期発見は乳房の変化から気づくことが重要です。ただ、異常を見つけようという気持ちが大きすぎると分かりやすい変化に注目してしまい、細かな変化に気づかない恐れがあります。 肩肘をはらずリラックス状態で、乳房の変化を意識しましょう。具体的な変化としては、乳房のしこり、皮膚のくぼみや引きつれ、乳頭や乳輪のただれ、乳頭からの分泌物などです。
6-3. 変化に気がついたらすぐ医師に相談する
しこりや引きつれなど、乳房の変化に気付いたら、次の検診を待つことなく病院やクリニックなどの医療機関を受診しましょう。 「これぐらいなら大丈夫」と安易に自己判断するのは危険です。いち早く専門医の診察を受けましょう。早期発見・早期治療は、乳がんの治療の成功率が大幅に向上します。
6-4. 40歳になったら、2年に1回乳がん検診を受ける
40歳以降の女性は、2年に1度の乳がん検診を受診しましょう。厚生労働省が推奨している乳がん検診は「死亡率を減少させることが科学的に証明された」有効な検診です。 乳がん検診にて、「異常あり」という結果を受け取った場合には必ず精密検査を受けるようにしましょう。
【引用元】 日本乳癌学会 ブレスト・アウェアネス https://www.jbcs.gr.jp/uploads/files/citizens/breastawareness_pamph.pdf

7. 高濃度乳腺が受けるべき乳がん検診とは
高濃度乳腺(デンスブレスト)は自分では判断できません。またマンモグラフィ検査を受診しないと、高濃度乳腺か分かりませんし、施設によっては本人への乳腺構造の通知をしていないこともあります。さらに乳腺濃度は日々変化するので、一度高濃度乳腺でなかったからといって、現在高濃度乳腺でないとは言い切れません。 そのため、高濃度乳腺の可能性が高い方は高濃度乳腺でも診断しやすい乳がん検診を定期的に受けることが重要です。 乳がん検診で代表的な検査として挙げられるものは乳腺エコー検査、マンモグラフィ検査、そして近年注目されつつある無痛MRI乳がん検診です。それぞれの検査には特徴がありますが、高濃度乳腺の方には乳腺エコー検査もしくは無痛MRI乳がん検診が適しています。 どちらの検査も乳腺組織の濃度が画像に影響を及ぼしません。そのため、高濃度乳腺で見やすいとされている検査です。 マンモグラフィ検査は必要ないのかと言われるとそうではありません。これは乳がんの発見において重要なシグナルとなる「石灰化」という画像所見はマンモグラフィ検査が最も判別しやすいからです。 そのため、乳がん検診は複数の検査を併用することで、より乳がん発見率を向上させることができます。
8. 高濃度乳腺の乳がん検診 乳腺エコー検査
乳腺エコー検査は超音波を用いて乳房の内部を観察し、しこりや病変の状態(硬さ等)を判断するのに適しています。超音波を皮膚から体の奥へ送り、送った超音波が体の組織にあたり反射した超音波を機械で受け取り、この受け取った超音波を画像にします。 乳腺エコー検査は全額自費であっても4000円前後で受けることができ、安価です。乳がん検診は2年に1回受診することを推奨されているため、費用が安いことは大きなメリットと言えます。 乳腺エコー検査は超音波を使った検査方法のため、磁場や被ばくのように胎児に悪影響を及ぼす可能性がなく、出産前後、授乳中も受けることができます。
8-1. 高濃度乳腺にはエラストグラフィ
乳腺エコー検査ではしこりの硬さをリアルタイムで視覚的に表示することが可能です。この技術を「エラストグラフィ」と呼びます。エラストグラフィでは硬さを色により表現します。基本的には硬い組織を青色、一般的な組織を緑色、柔らかい組織を赤色で表示します。がん細胞は組織の密度が高いため、硬くなりやすく、青色で表示されます。エラストグラフィを行うことで、しこりの良性・悪性の判断に活用できます。 高濃度乳腺の方は他の乳腺構造と比較すると、どうしても画像が見づらい傾向にあります。高濃度乳腺の方で乳房のしこりを検査する場合には役立ちます。 エラストグラフィは新しい技術のため、すべての医療施設で行われていません。エラストグラフィを受けたい場合には導入している医療施設を受診しましょう。エラストグラフィを行うことで乳腺エコー検査における乳がん発見精度が向上することが臨床研究で実証され始めています。近い将来、どの医療施設でも行われるようになるでしょう。
8-2. 高濃度乳腺でも痛みがない
高濃度乳腺の方は生理前には女性ホルモンの関係で乳腺濃度が上昇し、乳房が張った状態になります。マンモグラフィ検査では乳房の圧迫により痛みが強く出る可能性があるので、乳房に対してプローブと呼ばれる専用器具を押し当て行う乳腺エコー検査は適しています。 ただ、生理中は検査の精度が下がってしまうとも言われています。可能であれば生理後の受診がおすすめです。
8-3. 高濃度乳腺には他の検査との併用が理想的
乳腺は超音波を通しづらくないため、高濃度乳腺(デンスブレスト)により画像が見づらくなることはありません。高濃度乳腺でも安心して検査を受けることができます。 乳腺エコー検査は微細な石灰化を見つけることは難しく、微細な石灰化の検出はマンモグラフィが優れています。乳腺エコー検査は超音波を利用した検査のため、超音波を通しづらい脂肪が苦手です。乳房の大きい方は注意が必要です。 超音波検査全般に言えることですが、撮影者により画像の質が変わりやすい検査です。プローブの操作技術により画像の見えやすさが変わること、撮影者が検査の中で疑わしい部位を見つけて撮影をしていくため、術者の病気を見分ける目が重要になることに起因します。 このようにデメリットも多い検査ではあるので、単体での受診よりマンモグラフィ検査や無痛MRI乳がん検診との併用が理想的です。
9. 高濃度乳腺の乳がん検診 無痛MRI乳がん検診
無痛MRI乳がん検診(ドゥイブス・サーチ)は強力な磁石と電磁波を利用したMRI検査の一種で、DWIBS(ドゥイブス)という新しい撮影技術を活用し、乳がんの高い検出効率を実現しています。 無痛MRI乳がん検診では有効感度範囲が広く、他の検査で映りきらない範囲を死角なく撮影できます。これにより、マンモグラフィや乳腺エコー検査では撮影が難しいとされている乳房の奥側にある胸壁や脇の下において、高精度で検査することが可能です。 無痛MRI乳がん検診の診断精度は、従来の乳がん検診と比べて、3〜4倍も高いという報告があります。2023年2月のデータによれば、既に約17,000人がこの検査を受け、その中で1,000人に対し約20人の割合でがんが検出されているという結果が示されています。このように無痛MRI乳がん検診は他の検査と比べて病変検出率が高いことにより、欧米では乳がんのスクリーニングとしてハイリスク群に対して行われています。今後の乳がん検診の新たなスタンダードとして期待されています。 無痛MRI乳がん検診は放射線を使用しないため、被ばくはありません。無痛MRI乳がん検診で使用する磁気は体への悪影響がなく、何度受けてもよいとされています。2年に一度の受診が推奨されている乳がん検診に適しています。 乳がん検診においてメリットが多い無痛MRI乳がん検診ですが、最新の検査技術のため、検査費用は高価です。全額自費で受診する場合にはマンモグラフィ検査の約4倍程度になります。マンモグラフィ検査のように、自治体検診は行われていないため、病院での診療を除き自費での検査となります。
9-1. 乳腺濃度の影響を受けない
無痛MRI乳がん検診(ドゥイブス・サーチ)は乳腺濃度の影響を受けないため、高濃度乳腺(デンスブレスト)の方にも適した検査です。 無痛MRI乳がん検診では乳房の基本組織である乳腺と脂肪はどちらも白く映り、乳がんは黒く映ります。このため乳腺濃度の高低に関わらず、乳がんと乳房で白黒のコントラストがつきやすく、高濃度乳腺でも乳がんを見つけやすい検査です。
9-2. 高濃度乳腺でも寝台に腹ばいになるだけで検査できる
無痛MRI乳がん検診(ドゥイブス・サーチ)は寝台に腹ばいで寝た状態で撮影を行います。このとき、乳房は寝台にある機械の穴の中に入るようにします。これにより、乳房全体を撮影することができます。 マンモグラフィ検査のように圧迫版で乳房を挟む必要がないため、生理前に乳房が張りやすい高濃度乳腺の方でも痛みに関する心配はいりません。
10. 高濃度乳腺に適した乳がん検査の新技術を紹介
乳がんは日本人女性の発症率が最も高いがんと言われています。 乳がんは「早期発見」「早期治療」によって命を落とすリスクを減らすことができます。近年乳がんの検診機器は発達し、早期のステージで乳がんを見つけられる割合も増えてきました。最新鋭の検診機器である3Dマンモグラフィ『トモシンセシス』、高濃度乳房(デンスブレスト)とその判定ソフトウェア・Volpara(ボルパラ)を紹介します。
10-1. トモシンセシス(3Dマンモグラフィ)
トモシンセシスとは、通常のマンモグラフィより立体的な情報を得ることができる「3Dマンモグラフィ」とも呼ばれる新しい乳がん専門の検査機器です。 通常のマンモグラフィは2Dという撮影方法で、二方向からの撮影により三次元的な情報を確認します。それに対し、トモシンセシスはCTのようにX線を少しずつ移動しながら照射し、ずらしながら撮影する断層撮影です。連続して撮影することで、1回の撮影で 1mm程度にスライスした断層画像を複数枚作成します。1枚の撮影画像が薄いため、より鮮明な画像が得られます。 薄くスライスした画像を得られることで、診断しづらい石灰化や乳腺の重なりに隠れていた腫瘤が見つけやすくなります。特に、高濃度乳房(デンスブレスト)には効果的です。デンスブレストの方に対してマンモグラフィ検査が適さない理由としてあげられるのは、石灰化や腫瘤のカゲが正常乳腺に隠れてしまって見づらくなることです。トモシンセシスの細かい撮影により、乳腺との重なりの小さい画像が得られます。このため、高濃度乳腺の方でも診断がしやすいといえます。 通常のマンモグラフィ検査に追加して撮影することで病変の発見を向上させることができます。
10-2. ボルパラ(Volpara)判定
ボルパラ(Volpara)判定とは、自動式三次元乳腺密度測定ソフトウェアのことで、乳腺濃度をデジタル画像から、客観的に数値化して判定できます。数値の算出には撮影したマンモグラフィ検査の画像データを使用します。 画像データから乳房の体積測定を行い、再現性・客観性を保った数値を算出し、乳腺密度を4段階(a・b・c ・d )に分類します。「c・d」に分類された場合、高濃度乳腺に該当します。自身の乳腺濃度を知ることで、その後の検診や普段からの意識づけに活用でき、乳がんの早期発見につながります。 興味がある方は検診施設やクリニックなど導入をしている施設を選んで乳がん検診を一度受けてみるのも良いかもしれません。
11. まとめ
高濃度乳腺(デンスブレスト)は乳がん予防において、知っておくべき知識です。今回の内容を理解し、今後の日常生活に活かしてください。 高濃度乳腺の方もしくは高濃度乳腺の可能性が高い方は乳がん検診では乳腺の影響を受けづらい無痛MRI乳がん検診や乳腺エコー検査を選択しましょう。さらに複数の乳がん検診を行うことで、乳がんの見落としを予防できます。 トモシンセシスなど新しい技術の検査を受診したい場合には導入されている施設も少ないため、医療施設のHPで確認することをオススメします。 若年者は「高濃度乳腺の場合にはマンモグラフィ検査を受けても意味がない」と誤った認識で、乳がん検診を受けないという選択をする方もいます。若年者に多い高濃度乳腺は乳がんのリスクが他の乳腺濃度と比較し高いため、若年者でも十分に乳がんになるリスクはあります。マンモグラフィ検査以外を受診する、または乳がん検診を併用することで十分に乳がんを発見することは可能です。 乳がんの早期発見、早期治療のため、2年に一度の乳がん検診を忘れず受診していきましょう。