乳がんの生存率はどのくらい?ポイントは「早期発見」「早期治療」
「生存率」という言葉を聞いたことはありますか? 医療保険の加入時や医療関連のTV番組など、一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。 生存率はがんの治療効果を測る上で重要な指標であり、部位別の比較、ステージ毎の比較に使用されます。
女性がかかりやすいがんでは、大腸がん、肺がん、胃がんなども挙げられますが、その中でも乳がんは初期段階での生存率が高いがんと言われています。初期段階で見つけることで、9割近い方が治癒できる可能性があります。このため、乳がんでは2年に1度の定期検診を国が推奨しています。 この記事では乳がんという病気を知る上で重要となる「生存率」に関連する基礎知識を紹介します。この記事を読むことで、生存率がなぜ初期段階で高いのか、初期段階での早期治療することで得られるメリット、早期発見に必要な乳がん検診など網羅的に理解することができます。
乳がんの生存率を理解し、「早期発見」「早期治療」を心がけるようにしましょう。
目次
1.乳がんとは
乳房は乳汁をつくる乳腺とそれを囲む脂肪組織からなり、大胸筋という筋肉で支えられています。乳腺は乳管と小葉(しょうよう)からできており、乳頭から放射状に乳房全体に分布しています。 乳がんは乳腺の組織にできるがんで、小葉と乳管の上皮組織から発生し、増殖することにより、しこりとして見つかります。乳房のしこり以外にも、乳頭・乳輪の湿疹やただれ、乳頭からの分泌物などが乳がんの症状としてあげられます。 日本女性のがん部位別罹患者数1位となっており、日本人の9人に1人が乳がんと診断されており、女性にとって身近な病気といえます。
2.乳がんの生存率とは?
生存率とは診断から一定期間後に生存している確率のことで、がん患者の治療効果を判定する最も重要かつ客観的な指標です。 生存率は目的に応じて、1年、3年、5年、10年生存率などがあり、それらの数値から作成される生存曲線が年齢別の生存率の比較などに用いられます。部位別生存率を比較する場合やがんの治療成績を表す指標として、5年生存率がよく用いられます。
2-1.実測生存率と相対生存率
生存率には計算方法により実測生存率と相対生存率という2種類の数値が使用されます。 実測生存率は死因に関係なくすべての死亡を計算に含めた生存率です。この中には、がん以外の死因による死亡も含まれます。がん以外の死因で死亡する可能性に影響しうる要素(性、年齢、合併症など)も加味されていないため、異なるデータ同士の生存率を比較する場合には、これらの影響を補正する必要があります。 相対生存率はがん以外の死因を除いて、がんのみによる死亡を計算した生存率です。がん以外の死亡リスクが異なる集団における実測生存率を、対象者と同じ性・年齢分布をもつ日本人の期待生存確率で割って算出します。対象者における期待生存率は、国立がんセンターから発表されている全国の性別・年齢・歴年別の1〜15年生存率を用いて計算し、求めることができます。 相対生存率を利用することで、がん患者の予後を比較することができるため、一般的な指標としては相対生存率が用いられます。
2-2.生存率に関係するTNM分類とステージ分類
がんの進行度の指標としてTNM分類というのがあり、がんの治療方法や治療計画を決定する際の目安とします。 TNM分類は3個の項目により、がんの進行度を評価します。TNMの頭文字はそれぞれの項目を示し、「T」は原発のがんの広がり(深達度など)、「N」はがん細胞のリンパ節への転移の有無と広がり、「M」は原発から離れた臓器への遠隔転移を意味します。
Tumor(腫瘍):しこりの大きさ T1: 最大径が2㎝以下 T2: 最大径が2㎝を超えて4㎝以下 T3: 最大径が4㎝を超えて6㎝以下 T4: 舌の周囲やあごの骨にまで広がっている
Lymph Node(リンパ節):リンパ節への転移状況 N0: 頸部リンパ節転移を認めない N1: 3㎝以下の頸部リンパ節転移を1個認める N2~3: それ以上の広がりをもつ頸部リンパ節転移を認める
Metastasis(転移):他臓器への転移 M0:遠隔転移なし M1:遠隔転移あり
乳がんの病期はTNM分類の結果から0、ⅠA、ⅠB、ⅡA、ⅡB、ⅢA、ⅢB、ⅢC、Ⅳ期まで9段階のステージ分類に分けられます。0期は「非浸潤がん」、Ⅰ期以上は「浸潤がん」で、Ⅳ期に近いほど進行した状態です。 乳がんの生存率はステージ分類毎に試算されているため、ステージ分類を理解することで進行度合いによる生存率の違いを知る手助けとなります。
病期Ⅰ期:T1N0
病期Ⅱ期:T2N0
病期Ⅲ期:T1N3、T2N23、T3N13,T4N0~4
病期Ⅳ期:M1(T,Nは関係ない)
2-2-1.非浸潤がん(ステージ0)
非浸潤がんは、がん細胞が乳管・小葉の中に留まっている状態のことで、乳がんと診断される患者の内の10%が該当します。 非浸潤がんは最も初期の乳がんと言われており、転移や再発の危険性が低いため、完治しやすい段階です。手術療法における乳房部分切除で治療が可能なことが多いため、乳房の形を残した温存治療を選択することも可能です。
2-2-2.浸潤がん(ステージⅠ~ⅢA)
浸潤がんは乳管・小葉の外にまで広がった乳がんのことで、乳がんと診断される患者のうち、約80%以上は浸潤がんです。ステージⅠから小さなしこりが触知できるようになり、徐々に大きくなっていき、さまざまな症状が発生し始めます。 腫瘍が比較的小さい場合には乳房部分切除術が可能ですが、腫瘍が比較的大きい場合には乳房全切除術が必要になる可能性があります。腫瘍が大きくそのままでは乳房部分切除術ができない場合には術前に薬物療法を行い、腫瘍を小さくします。腫瘍が小さくなった場合には部分切除も視野に入れます。
2-2-3.局所進行乳がん(ステージⅢB,ⅢC)
5cmを超える腫瘍、皮膚や筋肉に広く浸潤している、炎症性乳がん、あるいはリンパ節に多数の転移を確認するような場合、遠隔転移を有しない局所進行乳がんと診断されます。 手術を可能にするために薬物療法を先行し、薬物療法を行った後に乳房のしこりや腫れていたリンパ節が縮小し、手術が可能になった場合には手術や放射線療法などの局所療法を追加することを検討します。
2-2-4.遠隔転移を伴っている乳がん(ステージⅣ)
しこりの大きさやリンパ説の転移状況に関係なく、骨や肺、肝臓などの多臓器への転移が認められている場合には転移乳がんとなります。基本的には外科的手術の対象外となり、薬物療法により全身治療を行います。 ステージⅣは末期がんと捉えてしまう方が多いですが、この認識は間違いです。末期がんは「治療ができない状態のがん」を指しますが、進行した乳がんでも完治は難しくとも治療効果はある場合があります。そのため、乳がんのステージⅣは末期がんとは必ずしもなりません。 2-3.日本における乳がんの罹患者数と死亡者数 2018年の全国がん登録データによると、女性の全部位のがん罹患数は421,964人、うち乳がん罹患者数は93,858人でした。これは全部位のがん患者の22.2%にあたり、女性のがんの中で最も患者数が多いといえます。 乳がんは食生活や生活習慣の変化などの要因により、患者数が増加傾向にある病気です。50年前の日本では、生涯のうちに乳がんになる女性の割合は、50人に1人でした。近年では日本人の9人に1人が乳がんと診断されています。 乳がんは年間で15000人前後の人が亡くなられており、また30~64歳の女性に絞ると、女性のがんによる死亡者数で1位です。乳がん罹患率は30代後半から急増するため、働きざかり・子育て世代の比較的若い世代もかかるがんです。このため、若年者からの乳がん検診が推進されているのです。
2-4.現代における乳がんの生存率は?初期ステージは95%以上
がん患者の治療効果を判定する最も重要な指標である生存率は、診断からの期間ごとに算出されます。部位別の生存率を比較する場合の指標として、5年生存率がよく用いられており、便宜上、治癒率の目安となっています。目的に応じて、1年、2年、3年、5年、10年生存率が用いられます。 乳がんの5年生存率は0期であれば100%であり、進行が進むにつれてⅠ期95.2%、Ⅱ期90.9%、Ⅲ期77.3%、Ⅳ期38.6%は下がっていきますが、初期のステージと言われている1期までで、95%以上と高い生存率となっております。 10年生存率では5年生存率と比較し、初期ステージに大きな違いはありませんが、より進行ステージに行くほど生存率が下がっていきます。乳がんはステージIIでも90%を超えており、胃がんはステージⅡで80%前後、小細胞肺がんではステージⅠ期でも50 %弱と、他部位で発生するがんと比較しても、高い水準といえます。 このように生存率が高い乳がんは早期に発見すれば治るがんと言われています。日頃から乳房を意識する自己触診や2年に1度の乳がん検診を積極的に行うことで、生存率の高い初期ステージからの治療を目指しましょう。
【引用】 国立がん研究センター がん統計 乳房 https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/cancer/14_breast.html#anchor1
3.乳がんの生存率を高くするには「早期治療」が重要
乳がんは、他のがんと比べて増殖のスピードが緩やかであることが多いといわれています。 人によっては周りの組織に広まらず、乳菅内で留まっている場合もあり、進行が遅いことが乳がんの初期ステージにおける生存率が高い要因です。 ただ、いくら増殖が緩やかな乳がんであっても、治療をせず放置するだけではがんが周りの組織に広がっていき、進行ステージと言える浸潤がんになってしまいます。リンパ管にのって、がん細胞が全身に周り多臓器に転移してしまば、生存率の低いステージⅣとなります。 このような事態を避けるために、できるだけ早い段階で発見し、早く治療を開始しなければなりません。 早期に発見できれば治癒できる可能性が高くなる以外にも、治療の選択の幅が拡がるといったメリットもあります。早期に発見し治療を開始できるかどうかにより、抗がん剤を使用せずに済んだり、乳房を全切除せずに済んだりと、その後の日常生活や生き方に大きな影響を与えるといえます。乳がんから命を守るためにも、そしてより健康な状態で過ごすためにも、少しでも早く発見して治療を行うことが重要です。
4.乳がんの治療法は多種多様
乳がんの治療には、手術(外科治療)、放射線治療、薬物療法があります。乳がんの治療は手術によってがんを切除することが基本となります。手術後の病理診断によって、術後の治療計画を検討します。がんの状態によっては、術前薬物療法(手術の前に行う薬物療法)を行うこともあります。
4-1.外科手術療法
乳がんの第一選択とされているのは外科手術療法であり、ステージ分類のⅢA期までは手術が中心と言われています。 乳房内のがんを取り除く外科手術には「乳房部分切除手術」と「乳房全切除術」があります。初期ステージであれば極力乳房を綺麗な状態で残せるよう、乳房部分切除術を選択します。
4-1-1.乳房部分切除術
乳房の一部を切除する手術方法で、がんを確実に切除しつつ、美容的にも満足できる乳房を残すことを目的に行います。手術としては、がんから1~2cm離れた周囲を含めて切除するのみで終了します。通常手術後は放射線照射を行い、残された乳房(温存乳房)の中での再発を防ぎます。 がんが大きい場合には部分切除は難しいことが多いため、術前薬物療法によってがんを小さくしてから手術を行うことがあります。 がんの残存によって追加切除を行います。残存が少ない場合には乳房を温存できることもありますが、がんの残存が多い場合は乳房全切除に切り替えることがあります。
4-1-2.乳房全切除術
乳がんのある側の乳房をすべて切除します。がんの位置、大きさ、乳房の形、患者さんの希望の有無を元に全切除術を行うか決定します。 乳頭、乳輪、皮膚を残せるケースがある反面、乳房だけでなく脇の下のリンパ節や一部の皮膚や筋肉も切除する必要が出てくる場合もあります。 再発がなければ、人工物や自身の脂肪組織を用いて、乳房の形を元に戻す乳房再建術を行うことも可能です。
4-1-3.腋窩リンパ節郭清
腋窩リンパ節とは、わきの下のリンパ節のことで、乳がんで転移が起こりやすい場所とされています。腋窩リンパ節郭清は腋窩リンパ節に転移がある場合に行うリンパ節を切除する手術のことをいいます。リンパ節への転移は手術前の触診や画像診断、手術中のセンチネルリンパ節生検などで診断します。 腋窩リンパ節郭清は転移したリンパ節を切除するのみではありません。転移したリンパ節の数が多いほど再発の危険性が高いことがわかっています。そのため、リンパ節の転移個数を確認することで、再発の危険性も診断できます。さらに腋窩リンパ節を切除することで、再発の予防ともなります。
4-2.薬物療法
薬物療法は、乳がんに対して「再発の危険性を下げる(術前薬物療法・術後薬物療法)」、「手術前にがんを小さくする(術前薬物療法)」、「手術が困難な進行がんや再発に対して延命効果を得ることや症状を緩和する」などの目的のために行います。 薬物療法の種類はステージ(病期)、サブタイプ分類、再発のリスク、患者の希望などを考慮し、選択します。その中でも特にサブタイプ分類が重要です。サブタイプ分類は乳がんが何によって増殖するか(女性ホルモンまたはHER2タンパク)によって簡易的に決定されます。サブタイプ分類には、「ルミナルA型」「ルミナルB型」「HER2型」「基底細胞様型(トリプルネガティブタイプ)」の4つのタイプに分類でき、治療方針の決定に利用されます。
4-2-1.ホルモン療法
ホルモン療法はホルモンの分泌や働きを阻害し、ホルモンを利用して増殖するタイプのがんを攻撃する薬を使用した治療法です。ホルモン感受性乳がんに対する術後補助療法、進行・再発乳がんの治療に用いられます。 薬剤の種類には、体内のエストロゲン(女性ホルモン)の量を減らすホルモン療法薬やがん細胞がエストロゲンを取り込むのを妨げるホルモン療法薬があります。
4-2-2.細胞障害性抗がん薬
細胞の増殖の仕組みに着目して、その仕組みの一部を邪魔する薬剤を使用することでがん細胞を攻撃する治療法です。抗がん剤はすべての細胞に対し、毒性がありますが、正常細胞とがん細胞を比較すると、正常細胞の方が抗がん剤に対する抵抗力を備えています。 この抵抗力の違いを利用し、正常細胞が耐えることができる毒性の抗がん剤を投与することで、抵抗力の弱いがん細胞を死滅させます。がん細胞以外の正常に増殖している細胞も毒性の影響を受けるため、脱毛や吐き気などの副作用が発生します。 抗がん剤は再発を抑制する目的で使用されますが、乳がんのサブタイプによりどの程度効果があるかが異なります。乳がんのサブタイプにより、副作用と再発予防効果を天秤にかけ、抗がん剤治療を行うかを決定します。
4-2-3.分子標的治療薬
がん細胞特有の性質を利用し、がんの増殖に関わるタンパク質などを標的にし、がんを攻撃する分子標的薬を使う治療法で、正常な細胞への影響が少ないことが特徴です。 サブタイプ分類におけるHER2陽性の乳がんにおいて、分子標的治療薬が利用されます。乳がんの治療に使われる分子標的薬は単独の使用でなく、抗がん剤やホルモン療法薬といった他の薬剤と組み合わせて使うことで、乳がんへの治療効果が確立されています。
4-2-4.免疫チェックポイント阻害薬
患者自身の免疫システムを活性化または調節する薬剤を使用することで病気と闘わせる治療法です。これにより、がん細胞が免疫にブレーキをかけるのを防ぎます。サブタイプ分類におけるトリプルネガティブ乳がんの場合に使用することがあります。
4-3.放射線治療
放射線治療は、乳がんに対し、高エネルギーの放射線を照射することで、がん細胞を小さくする治療法です。基本的には手術後に乳房に残った乳がんの一部を死滅させ、再発を防ぐために行います。定期的に照射を行うことが必要なため、数週間の期間をかけて照射するのが一般的です。 高エネルギーの放射線を人体に照射するため、放射線の影響を受けやすい皮膚では火傷のような症状が副作用として現れます。ただ、一時的な影響であるため、照射終了後2~3週間で治癒することがほとんどです。その他にも、乳房に近い肺や食道でも肺炎や食道炎などの副作用が起こることがあります。これらは放射線治療後すぐに現れず、期間が空いてから発生する晩発障害です。数ヶ月後以降も自身の体調に注意してください。
5.乳がんの早期治療に繋げる「早期発見」には定期検診が必須
乳がんの早期治療には早期発見が不可欠ですが、乳がんは初期段階では自覚症状が出づらく、自身では気付きにくい病気です。そのため、乳がん検診を自覚症状がないうちから受けることが必要になります。乳がんに対する国の指針においても、40歳以降は2年に1度の検診受診が推奨されています。 自治体が行なっている乳がん検診にはマンモグラフィ検査、乳腺エコー検査があり、マンモグラフィ検査単独での受診もしくは乳腺エコーを併用受診することが一般的です。
5-1.石灰化の検出が得意 マンモグラフィ検査
マンモグラフィ検査はX線を用いた画像検査で、多くの施設で導入されている身近な乳がん検診です。乳房を2枚の圧迫版で挟み、乳房全体をなるべく均等な厚みに広げた状態で撮影を行います。乳房は柔らかく厚みがあるため、通常のレントゲン撮影では厚みの違いにより異常が見つけづらくなります。乳腺の中のがんを見つけるには、なるべく乳腺組織を広げてしこりと区別することが重要です。乳房の圧迫には動きによる画像のブレを無くす効果や被ばくを少なくする効果もあります。 マンモグラフィ検査では乳房全体を2方向以上で撮影を行います。これは複数の方向で撮影することで死角をなるべく少なくするためです。一般的には正面と斜めを左右で行うので、合計4枚の撮影を行います。 マンモグラフィ検査では他の乳がん検査では検知しづらい微細な石灰化を画像に表示することができます。乳がんは石灰化を伴うことがあるため、石灰化を見つけることで乳がん自体を画像上ではっきりと確認できない場合でも乳がんを見つけられます。特に早期の乳がんではしこりが小さく、画像上でしこり自体を見つけることが難しいため、石灰化の検出が得意なマンモグラフィは非常に有用な検査といえます。 ただ閉経前の若年者に多い高濃度乳腺(デンスブレスト)の場合、乳がんを見つけづらくなる可能性があります。マンモグラフィ検査では画像上に乳腺も乳がんも白く映るため、乳腺の量が多い方では乳がんとコントラストがつきづらいからです。 乳腺の量は人種や年齢、授乳中など様々な要因によって個人差があります。基本的には加齢とともに乳腺は徐々に小さくなり、乳房に対する脂肪の割合が増えていきます。若年者の方がマンモグラフィを受ける場合には乳腺の影響を受けづらい乳腺エコー検査や無痛MRI乳がん検診を併用するとよいでしょう。 近年では3Dマンモグラフィと呼ばれる「トモシンセシス」という細かい断層撮影を行う技術が普及しつつあります。これにより、細かいスライス画像での診断が可能になり、マンモグラフィ撮影においてもデンスブレストの影響を受けづらくなってきています。
5-2.体への影響が少ない 乳腺エコー検査
乳腺エコー検査は超音波を用いて乳房の内部を観察する検査です。超音波を皮膚から体の奥へ送り、送った超音波が体の組織にあたり反射した超音波を機械で受け取り、この受け取った超音波を画像にします。 乳腺エコー検査では乳房に対してプローブと呼ばれる専用器具を押し当てて行うのみであり、マンモグラフィ検査の様に乳房への大きな圧力を必要とせず、痛みを伴いません。また放射線ではなく超音波を利用するため、被ばくもありません。体への悪影響がないため、誰でも受けやすい受診しやすい?検査といえます。、 乳腺は超音波を通しやすく画像上、ノイズになりにくいため、マンモグラフィが苦手とする高濃度乳腺(デンスブレスト)の影響は受けづらいとされています。よってマンモグラフィ検査を補完する検査といえます。 乳腺エコー検査は微細な石灰化を見つけることは難しく、微細な石灰化の検出はマンモグラフィ検査が優れています。乳腺エコー検査は超音波を利用した検査のため、超音波を通しづらい脂肪が苦手です。このため、単独で受診するよりも他の乳がん検診との併用受診が理想的です。
6.乳がんの早期発見なら新しい定期検診、無痛MRI乳がん検診(ドュイブス・サーチ)がオススメ
乳がん検診といえば、マンモグラフィ検査と乳腺エコー検査が常識となっていますが、近年では乳がんへの高い検出率を誇る無痛MRI乳がん検診(ドュイブス・サーチ)が注目されつつあります。 無痛MRI乳がん検診はその名のとおり、MRI検査の一種です。MRIは強力な磁場の中で、磁石と電磁波を利用し、さまざまな断面を撮影します。この中でも無痛MRI乳がん検診はDWIBS(ドュイブス)と呼ばれるがんや腫瘍を検出することができる撮影技術を利用することで、乳がんを簡便に検出できます。 無痛MRI乳がん検診は磁気を利用して撮影する検査のため、マンモグラフィ検査と異なり、衣服が撮影の邪魔にならず、検査着のままでも撮影が可能です。このため、乳房を見せる必要なくプライバシーが保たれた状態で撮影が可能です。 最近では無痛MRI乳がん検診を行なっている施設が増えてきており、日本全国で受診できるようになりつつあります。
6-1.検査中の痛みがない
無痛MRI乳がん検診(ドュイブス・サーチ)はマンモグラフィ検査のように圧迫版で乳房を挟む必要がないため、痛みはありません。また乳房に対する手術を受けた方でも傷口や人工物(シリコンなど)を気にせず、撮影を受診することができます。検査を受診 撮影自体は寝台に腹ばいで寝た状態で行います。このとき、乳房は寝台にある機械の穴の中に入るようにします。これにより、乳房全体を撮影することができます。 磁気を使う影響で体格の大きい方は体が熱くなることがあります身体?全体がぽかぽかする程度ですので、心配は特に必要ありません。
6-2.被ばくがない
無痛MRI乳がん検診(ドュイブス・サーチ)はMRIの一種であるため、放射線は使用せず、被ばくはありません。定期的に受診する必要がある乳がん検診において、被ばくがなく、何回受けても体への悪影響がないことは大きなメリットです。 放射線を使用しないため、妊娠中も可能と考える方もいらっしゃいます。磁気は胎児への影響の可能性を否定できないため、妊娠中の方は検査を避けた方が安心です。妊娠中の場合には乳腺エコー検査を受けましょう。
6-3.乳腺濃度の影響を受けづらい
無痛MRI乳がん検診(ドュイブス・サーチ)は乳腺濃度の影響を受けないため、高濃度乳腺(デンスブレスト)の方にも適した検査です。無痛MRI乳がん検診では乳房の基本組織である乳腺と脂肪はどちらも白く映り、乳がんは黒く映ります。このため乳腺濃度の高低に関わらず、乳がんと乳房で白黒のコントラストがつきやすく、高濃度乳腺でも乳がんを見つけられます。
6-4.検出範囲が広く、診断性度が高い
無痛MRI乳がん検診(ドュイブス・サーチ)の診断精度は、従来の乳がん検診と比べて、3〜4倍も高いという報告があります。2023年2月のデータによれば、既に約17,000人がこの検査を受け、その中で1,000人に対し約20人の割合でがんが検出されているという結果が示されています。 この理由として、無痛MRI乳がん検診では有効感度範囲が広く、マンモグラフィ検査や乳腺エコー検査が苦手とする乳房奥側にある胸壁や脇の下などを死角なく高精度で検査することが可能な点が挙げられます。
7.まとめ
乳がんは初期ステージであれば、95%以上の生存率で治療が可能です。また乳房を全て取り除くのではなく、乳房を温存した状態で治療が可能になります。 初期ステージからの治療のためにも、早期発見・早期治療が重要です。定期的な乳がん検診を心がけましょう。 より早期発見を目指すためにも、日頃から自己触診やブレストアウェアネスといった自身でできる乳がん対策も行うと良いでしょう。 生存率はあくまでも統計上の数値であり、患者により症状や進行のスピードは様々です。乳房に異常を感じた場合は、すぐに病院を受診するようにしましょう。