無痛MRI乳がん検診とは
(ドゥイブスサーチ)

無痛MRI乳がん検診(ドゥイブスサーチ)とは、
名前の通り、『MRI』を使った『痛みが全くない』乳がん検査です。

MRI(Magnetic Resonance Imaging)検査は、がんの有無や広がりなど、電磁波により撮影を行う精密検査です。
MRI検査は筒状の機械に入り検査を行う為、痛みはありません。

MRI検査では、造影剤を注射するケースもありますが、
無痛MRI乳がん検診(ドゥイブスサーチ)では、造影剤注射は不必要な為、身体に痛みも負担も一切ない最新の検査方法(ドゥイブス法)によって乳がん検査を行います。

DWIBS法(ドゥイブス法)とはなにか?

2004年に、日本人医師の高原太郎(東海大学、医学博士、放射線科専門医)により英文発表された、MRIによる検査方法です。
寝ているだけで全身の癌の有無や分布を診断できる撮影法です。

2004年5月3日の毎日新聞全国版一面掲載となり、大きなニュースになりました。ドゥイブス法が考案される前は、PET検査(FDG-PET検査)しか、全身癌スクリーニングをする方法がなかったからです。

ドゥイブス法の考案により、受診者さんは、PETかDWIBSかを選択できるようになりました。

2020年に、国(厚生労働省)による、診療報酬加算の対象になりました(全身MRIによる前立腺癌骨転移診断)。これは、国により正式に技術が認められたという意味があります。

ただし、画質は病院によりまちまちであるため、学会での認定や、研究会での研鑽が行われています。

最近では、DWIBS法を利用した、無痛MRI乳がん検診(愛称:ドゥイブス・サーチ)も行われています。

DWIBS法ってどういう意味?
ドゥイブス法は、なんで発音が難しいの?

これは、外国人が発音しやすいように考えられたからです。外国人(英語話者)は、小さいときから「DO IT!」(ドゥーイット!=それをしなさい)と言われることが多いので、「ドゥイ」という発音に慣れ親しんでいることによります。

そのため日本人には馴染みの少ないコトバになりました。ドゥイブス法、ドゥ・イット。連想すると覚えやすいかもしれません。

正確には、Diffusion weighted Whole body Imaging with Background body signal Suppression(DWIBS)の略で、これは、「広範囲・背景信号抑制・拡散強調画像」という意味です。

拡散強調画像(DWI(Diffusion weighted imaging))は、1998年頃から、脳梗塞診断の切り札として臨床に導入され、脚光を浴びました。その6年後に、高原により改良され、DWIBS法として、全身の癌の診断に用いられるようになったのです。

DWIBS法の特長(利点)

ドゥイブス法は、放射線被曝がなく、また検査のための準備が不要という特長があります。このため、病院に行ったときに、着替えたらすぐに検査に入れます。

PET検査は、自分の体に放射性同位元素を注射し、かつこれが尿から排泄されるので、検査後の排尿などに注意が必要です。つまり、飛び散らせたり衣服についたりすると、そこに放射能がついてしまうので、他の人が使えないことになりますし、あるいは、お孫さんなど子供に近づくこともできません(検査後数時間はこういった制限がでます)。

PET検査の被曝は、全身平均で3mSv(ミリシーベルト)程度であり、ごく軽度の被曝です。ただし、膀胱から放射性同位元素が排泄されますので、全身平均では3mSvですが、膀胱においては30〜40mSvの被曝をします。乳腺などにも平均の2倍程度被曝します。

ドゥイブス法は、検査終了したら終わりで、なにも注意事項はありません。つまり病院に滞在しなくてはならない時間が圧倒的に短いです(だいたい1時間半ぐらいもあれば、検査(30分程度)は終了し、あとはお会計をするだけです。PET検査では、事前安静(2時間程度)も含め、最低でも半日はかかります。

造影剤を投与しないので、アレルギーがある人でも受けられます。また、造影剤漏れなどの心配もありませんから、癌の患者さんで血管が細くなったときにもラクに受けられます。

PETは、糖代謝を利用しますので、糖代謝に大きな以上のある人(ひどい糖尿病の人)程度は検査の正確性がすこし落ちます。DWIBS法はとくに関連ありません。

DWIBS法の欠点

DWIBS法は、MRIを用いた検査です。DWIBS法自体の制限事項はほぼありませんが、MRIには制限事項があります。

MRIは、強い磁場を使うので、心臓ペースメーカーが入っている方は使えない場合があります(最近では、MRIに対応したペースメーカーもあります)。また古い脳動脈瘤クリップの入っている方は使えないことがあります(最近は非磁性クリップになっていますので大丈夫です)。

そのほか、あまりに大きな入れ墨(タトゥ)があると、皮膚がやけどをする可能性があるので、検査を断られる場合があります(病院で各々のケースに対して判断します)。また閉所恐怖の方は、受けられないことがあります。閉所恐怖だと思う人は、事前に安静剤などを投与してリラックスして受けられることもあります。

MRIは、その特性上、撮影時に大きな音がします。慣れればそれほど問題ではありませんが、はじめて場合は不快に思われる方もいらっしゃいます。

DWIBS法には、どんな使われ方がありますか?

(1)全身のがんスクリーニング(人間ドック)

  • 健康な人に対し、人間ドックで行う方法です。
  • がんの全身スクリーニングができます。
  • 放射線被曝なし、造影剤投与なし、事前安静なしで検査ができます。
  • 癌の検出能は、メタアナリシスという方法で検証されており、PETとほぼ同等です。
  • DWIBS検査は、MRI検査ですから、そのほかの画像(たとえば膵管を検査するMRCPや、ヘルニアを調べることなど)も撮影してくれるところもあります(病院により異なる)。
  • 費用は5万円〜10万円程度で行われていることが多いです。
  • 最近、線虫検査などでがんの高リスクになった方の受け皿になっています。
  • 発明者が画質を管理している病院は、次の通りです(リンクを貼る)。

(2)無痛MRI乳がん検診(ドゥイブス・サーチ)

  • 痛みがない乳がん検診です。
  • 高原により、世界で初めて着衣のまま(つまり技師に肌を見ぜずに)検査ができるように改良されました。
  • 放射線被曝がありません。
  • 検査は15分程度です。
  • 費用は2万円程度で行われていることが多いです
  • 診断成績は極めて高く、受診者1000人中20人ほどの癌がみつかります。また陽性適中率という指標では、一般的な乳がん検診の3〜4倍程度高い値を示しています。
  • これまでに17000人が受診しました(2023年2月現在)。年間の受診者数は7000〜10000人(2023年予測)です。
  • 女性の記者やディレクターの熱意によります。女性雑誌やテレビで頻繁に紹介されています。

(3)癌にかかった方の検査(保険診療)

  • 癌にかかった人、癌の疑いが出た人が保険で受けられる検査です。
  • 3割負担の場合、一般的に6000〜7000円の安価で受けられます。これは造影CT(約11000円)よりも安価で、きわめてリーズナブルなお値段です。
  • 3ヶ月に一度ぐらい受けることができます。PETは1年に1回程度ですから、きめ細やかな治療経過観察を受けられることになります。
  • 造影剤を使用しないので、血管が細く、漏れやすい人にもストレスがありません(病院に来て、寝るだけです)。
  • 癌の発見だけでなく、とくに治療経過観察に向いています。

書庫

DWIBS法(ドゥイブス法)に関しての、発明者(高原太郎)の論文は以下のようです。

最近の状況はPubMedで”Taro Takahara”を検索してください(リンク)。

1)全身の拡散強調画像に関する主な論文

Takahara T, Imai Y, Yamashita T, Yasuda S, Nasu S, Van Cauteren M. Diffusion weighted whole body imaging with background body signal suppression (DWIBS): technical improvement using free breathing, STIR and high resolution 3D display. Radiat Med. 2004 Jul-Aug;22(4):275-82

• 従来、局所的な撮影だけを行っていた拡散強調画像を全身撮影に用いる方法(DWIBS法)を報告した。
• FDG-PETに似た画像が撮影できる。
• 2010年末までの被引用回数は300を超えている。
• 2004年5月3日の毎日新聞全国版一面掲載された(写真1)。

Kwee TC, Takahara T, Ochiai R, Nievelstein RA, Luijten PR. Diffusion-weighted whole-body imaging with background body signal suppression (DWIBS): features and potential applications in oncology. Eur Radiol. 2008 Sep;18(9):1937-52.

• DWIBS法を包括的に概説したReview Article。
• 原理・臨床応用・Limitationなど。

Takahara T, Kwee T, Kibune S, Ochiai R, Sakamoto T, Niwa T, Van Cauteren M, Luijten P. Whole-body MRI using a sliding table and repositioning surface coil approach. Eur Radiol. 2010 Jun;20(6):1366-73.

• DWIBS法を、全身撮影機能を持たない従来機で撮影できるようにする工夫について述べた。
• 経験豊富な技師が必要、MRI装置の開口部が少し狭くなるため肥満患者の撮影不可などの制約はある。

Takahara T, Kwee TC, Van Leeuwen MS, Ogino T, Horie T, Van Cauteren M, Herigault G, Imai Y, Mali WP, Luijten PR. Diffusion-weighted magnetic resonance imaging of the liver using tracking only navigator echo: feasibility study. Invest Radiol. 2010 Feb;45(2):57-63.

• 上腹部撮影時に、呼吸動機撮影を行うと撮影時間が3倍近くに延長するが、撮影時間が延長しない方法(TRON法)を考案し、発表した。

Yamashita T, Takahara T, Kwee TC, Kawada S, Horie T, Inomoto C, Hashida K, Yamamuro H, Myojin K, Luijten PR, Imai Y. Diffusion magnetic resonance imaging with gadofosveset trisodium as a negative contrast agent for lymph node metastases assessment. Jpn J Radiol. 2011 Jan;29(1):25-32.

• Vasovistを用いて、良性リンパ節の信号を抑制し得ることを示した(ラット)

Takahara T, Kwee TC. Low b-value diffusion-weighted imaging: Emerging applications in the body. J Magn Reson Imaging. 2012 Jun;35(6):1266-73.

• b値の低いDWIの利用法について提案した(review)

2)前立腺癌の拡散強調画像に関する主な論文

Yoshida S, Takahara T, Arita Y, Sakaino S, Katahira K, Fujii Y. Invited Review. Whole-body diffusion-weighted magnetic resonance imaging: diagnosis and follow-up of prostate cancer and beyond. Int J Urol. In press.

• 全身拡散強調MRIを用いた前立腺癌診療についての総説

Yoshida S, Takahara T, Arita Y, et al. Progressive Site-Directed Therapy for Castration-Resistant Prostate Cancer: Localization of the Progressive Site as a Prognostic Factor. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2019 Jun 12. pii: S0360-3016(19)30837-5.

• 去勢抵抗性前立腺癌に対する新規治療として、活動性病変に対する局所療法を提唱する論文。
• 全身拡散強調MRIにより同定される去勢抵抗性前立腺癌の活動性病変は局所療法の有効な治療対象となることを示した。
• 活動性病変に対する局所療法は、骨盤内に限局する症例に対してより良好であることを見出した。

Yoshida S, Takahara T, Ishii C, et al. METastasis Reporting and Data System for Prostate Cancer as a Prognostic Imaging Marker in Castration-resistant Prostate Cancer. Clin Genitourin Cancer. 2019 Dec 14. pii: S1558-7673(19)30383-0. doi: 10.1016/j.clgc.2019.12.010.

• 去勢抵抗性前立腺癌の全身拡散強調MRI所見と予後との関連を示した論文。
• 全身MRIの撮影法、評価法、治療効果判定法の標準化を目的とし、提唱されたMETastases - Reporting and Data System in Prostate Cancer (MET-RADS-P)の有用性を示した。

Yoshida S, Takahara T, Arita Y, et al. Patterns of failure after progressive site-directed therapy in oligo-progressive castration-resistant prostate cancer. Int J Urol. 2020 Jul;27(7):634-635. doi: 10.1111/iju.14249.

• オリゴ転移の去勢抵抗性前立腺癌に対する標的療法後の再発形式を評価した論文。
• 標的療法後の再発形式としては、標的療法部位よりも新規遠隔転移が主であり、標的療法時のマイクロな遠隔転移の存在が想定される。

Yoshida S, Takahara T, Yokoyama M, et al. Can Progressive Site-Directed Therapy Prolong the Efficacy of Subsequent Androgen Receptor-Axis-Targeted Drugs in Oligometastatic Castration-Resistant Prostate Cancer? Int J Urol. In Press.

• オリゴ転移の去勢抵抗性前立腺癌に対する標的療法の新規ホルモン薬の治療効果への影響を評価した論文。
• 標的療法を施行した症例では施行していない症例よりも新規ホルモン薬の治療効果が良好であることを示した。標的療法の施行によりその後の治療への良い影響が想定される。

Yoshida S, Takahara T, Arita Y, Toda K, Yamada I, Tanaka H, Yokoyama M, Matsuoka Y, Yoshimura R, Fujii Y. Genuine- and Induced-Oligometastatic Castration-Resistant Prostate Cancer: Clinical Features and Clinical Outcomes after Progressive Site-Directed Therapy. Int Urol Nephrol. In press.

• EORTCとESTROが提唱したオリゴ転移の分類にもとづき、去勢抵抗生前立腺癌を分類し、標的放射線療法の有用性について検討した論文。
• もともと多発転移であった時期のない、オリゴ転移癌の方が標的放射線療法の治療効果が良好であることを示した。

3)末梢神経の描出に関する主な論文

Takahara T, Hendrikse J, Yamashita T, Mali WP, Kwee TC, Imai Y, Luijten PR. Diffusion-weighted MR neurography of the brachial plexus: feasibility study. Radiology. 2008 Nov; 249(2):653-60.

• DWIBS法と、Soap-Bubble MIP法を組み合わせることにより、頚部の末梢神経を描出することに成功した。
• 「Radiology」誌の表紙として採用された(写真2)。

Yamashita T, Kwee TC, Takahara T. Whole-body magnetic resonance neurography. N Engl J Med. 2009 Jul 30;361(5):538-9.

• 全身の末梢神経描出に世界で初めて成功した。
• 科学誌の中で最も権威のある「New England Journal of Medicine」(Impact factorは50程度=NatureやScienceなどの2倍程度)に採用された。
• 毎日新聞夕刊に掲載された(写真3)。

Takahara T, Hendrikse J, Kwee TC, Yamashita T, Van Cauteren M, Polders D, Boer V, Imai Y, Mali WP, Luijten PR. Diffusion-weighted MR neurography of the sacral plexus with unidirectional motion probing gradients. Eur Radiol. 2010 May;20(5):1221-6.

• 従来、拡散を検出する勾配磁場は3方向用いられており、末梢神経描出には6方向以上用いることがより好ましいとされてきたが、逆に1方向だけで撮影することにより画質が向上することを示した。
• ルーチンでの末梢神経描出が容易になった。

Takahara T, Kwee TC, Hendrikse J, Van Cauteren M, Koh DM, Niwa T, Mali WP, Luijten PR. Subtraction of unidirectionally encoded images for suppression of heavily isotropic objects (SUSHI) for selective visualization of peripheral nerves. Neuroradiology. 2011 Feb;53(2):109-16.

• 関節部など、上記方法を用いても描出が不良となる領域について、サブトラクション法を用いて末梢神経描出が可能であることを示した。

安心、安全、痛くない
無痛MRI乳がん検診の特長

MRI検査の音は
こちらから聞くことが出来ます

よくある質問

どこで受けられますか?

乳房インプラントが入っていますが受けられますか?

どのぐらいの時間が必要ですか? なにか準備は必要ですか?

どのぐらいがんが見つかるのですか?

生理や妊娠・授乳との関係はありますか?

被ばくはないでしょうか?

MRI乳がん検診はどうやってがんを見つけるのですか?

MRI乳がん検診はどのくらい(回数・頻度)受ければいいですか?

閉所恐怖なのですが大丈夫でしょうか?

MRI乳がん検診を受けることができない場合はありますか?

MRIはどんな音がしますか?