開発者の想い
無痛MRI乳がん検診(ドゥイブスサーチ)の開発者の高原です。
開発の経緯、想いをお話します。
私は放射線科専門医です。博士論文には乳がんの研究を選びました。だからマンモグラフィの持つ有用性を深く知っています。そのうえで、このMRI検診を開発しました。
従来の造影乳房MRIは、①精密検査のみに使う ②時間がかかる(20〜30分)③台数が少ないので検診に使うのは無理、と考えられてきました。
私は、放射線科の診断医師であるとともに、熟達した技師のようにMRIを自由自在に操作できるという、珍しい特性を持っています。「診断」と「撮像」の両方に精通している人は極めて稀で、日本はおろか、世界でもほとんど存在しません。
この両者の知識を併せ持つことができたので、これまでの問題を解決することができました。
実際に、これまでに3万人、昨年1年間だけで年間1万1000人もの方が受診しました。MRIはどの機種でも良いわけではなく、一部の高性能のものしか使えません。しかし試算では、年間30万人ぐらいまでは、現状の高性能MRI台数のままで、全く問題なく普及できます。
撮像時間はわずか15分です。「DWIBS法(ドゥイブス法)」という、私が考案した、MRIの撮像方法を用いて、「造影剤なし」でスキャンできます。だから時間が短いのです。このDWIBS法についての論文は、1200回以上引用されています*。この引用回数はすべての論文の上位0.1%タイル以上にあたります。
マンモグラフィは有用な検査です。しかし① 映らない部分(死角)があるので、15%ぐらいはもともと映らない② 40代のように、乳腺が豊富な年齢では、2人に一人の乳がんを見逃してしまう**、という重要な問題があります。マンモグラフィを導入してから23年も経ちますが、結果として乳がんによる死亡率は低下しませんでした。
「痛くて恥ずかしい」というイメージから、受診率は半数以下に留まっています。別の言い方をすると、現状では、過半数の人が乳がん検診を受けていないのです。そして、気づかずに進行した乳がんにかかり、とても残念なことに命を落とす方がいます。
だからこそ、痛くないMRI検査で乳がん検診を実施しようと考えました。MRI検査は、もともと服をはだけて(つまり肌を見せて)行っていましたが、私自身が再発明をして、服を着たまま、人に見られず検査を受けられるようにしました。
さらに、インターネットで手軽に予約できるようにしました。このため、働いている女性も、いつでも予約することができます。病院滞在時間は、会計も含めてわずか1時間。その後、自宅で結果を待つだけの簡便さで、検診が完了します。
このMRIは、被曝がゼロであるという、とても良い特長があります。このため、国が提供している対策型検診(40歳以上)を受けられない、40代未満の方も全く問題なく受けることができます。
タレントの方が2人のお子さんを残しておなくなりになったのは、30歳前半のときでした。20代でも乳がんにかかる方はいらっしゃいます。こうした若い方は、十分に守ることがこれまではできませんでした。
乳がん手術をした方、また豊胸術を受けた方で、インプラントが入っている方は、マンモグラフィで圧迫をすることができません。壊れてしまうからです。このような方も、何ら問題なく受けることができます。
科学的成績については、 乳がん関連学会で継続的に学会報告を続けています。ただスキャンするだけでなく、常時画質を監視して、劣化したときには修正してもらう精度管理を続け、従来の検診ではまったく得られなかったきわめて高い成績を示しています(癌発見率2%程度、陽性反応的中率30%程度)。
この検診が、「はじめての乳がん検診」である方は、全受診者のうち30%もの割合を占めます。いかに、今までの検診が人々に届いていなかったかを示すエピソードだと思いませんか。悩んでいた皆様にも、乳がん検診ができる時代がやってきました。
いまこの検診は、自由診療ですから、約2万円です(月額1800円相当)。高いですが、30代女性のがん保険が月額2500円相当であることを考えると、実はおなじぐらいの金額です。
みなさまが率先して受けてくださることにより、社会的に認知され補助につながります。すでに、3つの自治体から補助がでていて、いくつかの企業も職員検診でこの検診を補助対象にしました。
みなさまの声が頼りです。LINEのお友達になっていただければ時々情報をお伝えします。またファンクラブもできました。普及にご協力をいただけましたらありがたいです。
2024年4月
ドゥイブス・サーチ代表医師
高原太郎
- * Takahara T. Radiat Med 2004 (Google Scholarで1260回引用)
- ** 植松孝悦 (静岡がんセンター)インナービジョン2023
追補:乳がんリスクシミュレーターの設置について
先に述べましたように、マンモグラフィの感度は全員に対して満足のいくものではありません。
とくに、40〜50代の方や、高濃度乳房の方には、感度が足りないことは良く知られています。
そこで、いま学会では、「リスク層別化(りすくそうべつか)検診」という方法が検討されています。
これは「乳がんリスクの高い方には、より充実した検診を」ということを指します。
具体的には、リスクが高い方にはマンモ単独だけではなく、さらにエコー(超音波)を足す***ことを検討しているのです。
では、「あなたの乳がんリスク」は、一体どのぐらいなのでしょうか?
ところが、いままではそれを調べるサイトはありませんでした。
「日本には、ひとりひとりの乳がんリスクを計算するモデルがない」と言われてきたからです。
しかし私はある日、米国の国立がん研究所(NCI)のサイトを見ていて、「米国在住『日本人』」のデータがあることに、気づきました。
「このデータを解析し、日本語化したら、多くのみなさんに、近似値として使っていただける!!」
、、、そう思いたち、半年をかけて、ここに準備することができました。
このデータは、「米国在住の」日本人のものです。このため、日本の厚生労働省が公表しているデータも参考に、少し修正しました。
さらに、私達の検診を受けてくださった3000人からわかったこと・・「しこりや痛みのありなしによって、要精密検査になる割合がかなり違うこと」も反映しました。
これにより、かなり具体的にあなたのリスクをお示しできるようになりました。みなさんの受診そのものが、多くの方を助けることにもなるわけです。
もちろん近似値ですから、ある程度は誤差を含みます。
しかし、いま、まずは「自分の乳房を意識すること」****がとても大切だと言われています。
このリスクシミュレーターを試してみることで、みなさんの心に「自分ごと」として響くことを期待しています。
多くの方に関心をもっていただけたら幸いです。
2024年4月
ドゥイブス・サーチ代表医師
高原太郎
-
*** マンモでは概ね1000人中3人程度みつかり、エコー(超音波)を足すと5人程度に増えることが分かっています。ドゥイブス・サーチとの直接比較データはありません。
参考値として、ドゥイブス・サーチは1000人中20人程度と、かなり高い割合で乳がんが見つかっています。
有症状の方も受けにいらっしゃるので、見かけ上の成績が向上する影響はありますが、私たちはこれを「social cancer yield(社会的にがんをみつける)能力」と位置付けています。
つまり、検診の目標は、「いかに多くの方の乳がんを見つけ、病院への受診行動を促すか」ということなので、真のエンド・ポイントとしてのsocial cancer yieldが高いことこそが重要と考えています。 - **** ブレスト・アウェアネスと呼ばれていて、学会でこの概念の普及を推奨しています。
高原 太郎 医師
1961年東京都生まれ。秋田大学医学部卒業。聖マリアンナ医科大学放射線科勤務、東海大学医学部基盤診療学系画像診断学講師、オランダ・ユトレヒト大学病院放射線科客員准教授などを経て、2010年から東海大学工学部医用生体工学科教授
よくある質問
どこで受けられますか?
乳房インプラントが入っていますが受けられますか?
どのぐらいの時間が必要ですか? なにか準備は必要ですか?
どのぐらいがんが見つかるのですか?
生理や妊娠・授乳との関係はありますか?
被ばくはないでしょうか?
MRI乳がん検診はどうやってがんを見つけるのですか?
MRI乳がん検診はどのくらい(回数・頻度)受ければいいですか?
閉所恐怖なのですが大丈夫でしょうか?
MRI乳がん検診を受けることができない場合はありますか?
MRIはどんな音がしますか?
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